「部品もSPAが必要?」表面処理が精密加工を完璧にするカギ

 

精密加工の分野において、「表面処理」は単なる外観の美化ではなく、部品の性能・寿命・寸法安定性 に大きく関わる重要な工程です。CNC 加工部品の場合、メッキ・酸化・サンドブラスト・塗装などの処理が、前工程の設計や加工条件と適切に連携していなければ、見た目は美しくても、組立て精度・公差・耐食性に問題を引き起こす可能性があります。

 

✨ なぜ表面処理が重要なのか?

部品表面は、材料と外部環境の「最初の防壁」です。
表面処理によって、以下の特性が向上します。

  • 耐食性(防錆・防酸化)

  • 硬度・耐摩耗性

  • 導電性または絶縁性

  • 潤滑性および外観品質

しかし、処理方法によっては表面の厚み・粗さ・寸法公差が変化します。
前加工段階で十分な加工余裕を設けていない場合、
最終寸法が規格を超えてしまい、組立て不能・隙間過大・機能不良といった問題が発生します。

 

🧩 主な表面処理とその特性

 

処理方法厚み変化特徴・用途公差への影響
メッキ約 5~25 μm防錆・耐摩耗・導電性の向上(ニッケル、クロム、亜鉛、黒ニッケルなど)寸法がやや大きくなるため、事前補正が必要
アルマイト処理約 10~30 μmアルミ材に多用。硬度・耐食性向上、着色可能外層が硬く脆いため、ねじ部や嵌合面には不適
無電解メッキ約 5~15 μm均一な被膜で、複雑形状部品にも適用可能均一だが、孔径や公差に影響を与える
サンドブラスト0 μm(表面改質のみ)バリ取り・密着性向上・マット仕上げ表面粗さが変化するため、嵌合面には非推奨
塗装/焼付塗装約 20~50 μm外観保護や識別用途厚みが大きく、ねじ孔や嵌合部はマスキングが必要

 

⚙️ 表面処理と加工公差の重要な関係

表面処理の厚みは「ミクロン単位」ですが、精密部品にとっては数ミクロンの差が装着可否を左右します。
例えば:

  • ナットの内径に 15 μm のメッキを施すと、ねじ山が埋まり「ねじが入らない」状態になる。

  • 精密シャフトをアルマイト処理後に研磨しなければ、径が公差範囲を超え、軸受けが固着する。

そのため、設計・加工計画段階で処理厚を考慮し、前加工寸法を調整する必要があります。

 

🧠 加工前の「表面処理設計への配慮」

最終品質を安定させるために、設計段階で以下の3ステップを実施しています。

  1. 処理厚補正
    処理方法に応じて公差中心値を調整(例:外径を小さく、内径を大きく設定)。

  2. マスキング設計
    ねじ部、嵌合面、接地部などの機能面を保護し、不要な処理を防止。

  3. 処理後の二次加工
    高精度要求部品は、メッキ後に研磨・ポリッシュ加工で寸法を微調整。

 

🔍 実例紹介

ある顧客の精密コネクタ部品(SUS303材)で、黒ニッケルメッキ厚 8~12 μm の指定がありました。
補正なしで加工すると、メッキ後の外径が規格を 0.015 mm 超過します。
そのため、前加工時に -0.010 mm の補正を設定し、
メッキ後に公差中央へ収めることで、スムーズな組立てと均一な外観を実現しました。

このような「寸法余裕設計」は、精密製造における欠かせない専門技術です。

 

🧾 まとめ:表面処理は「最後の工程」ではなく「全体プロセスの一部」

現代の精密製造において、表面処理は単なる後処理ではなく、設計段階から考慮すべき要素です。
設計・加工・表面処理の三位一体管理によって、初めて以下を両立できます:

  • 外観の美しさと防錆性

  • 寸法精度

  • 組立て性能と機能性

これこそが、亨昌国際が長年培ってきた品質哲学です。「1ミクロンの違いが、精度と信頼の差になる。」