幾何公差とは何か?図面における GD&T の基本概念と分類

 

実際の加工や組立の現場では、図面上の寸法はすべて公差内にもかかわらず、部品がうまく組み付かない、回転が安定しない、機能に支障が出るといった状況がよく発生します。

このような問題は、寸法そのものが間違っているのではなく、部品の形状・方向・位置が適切に管理されていないことが原因である場合が多くあります。

これこそが、幾何公差(Geometric Dimensioning and Tolerancing:GD&T)の重要な役割です。

 

❓ なぜ寸法公差が合格していても、部品が使用できないのか?

寸法公差は、主に部品の「大きさ」を管理するためのものです。
例えば、外径 Ø10 ±0.01 は、寸法が指定範囲内に収まっていることを意味します。

しかし、実際の使用環境では、以下のような要素も大きく影響します。

  • 表面が本当に平らであるか

  • 軸芯がまっすぐであるか

  • 穴の位置が正確であるか

  • 回転時に振れが発生していないか

これらの条件は、寸法公差だけでは十分に表現することができませんすべての寸法が合格していても、機能や組立性に問題が生じることがあります。

 

📐 幾何公差とは何か?

幾何公差とは、部品の「幾何学的な状態」を規定するための指示方法です。
単なる寸法ではなく、部品が空間内でどのような形状・関係性を持っているかを管理します。

例えば、以下のような点を評価します。

  • 平らかどうか

  • まっすぐかどうか

  • 円形かどうか

  • 正しく位置合わせされているか

  • 回転が安定しているか

幾何公差を用いることで、図面は設計意図をより正確に伝えることができ、加工や検査においても「機能要求」を基準に判断することが可能になります。

 

🏆 幾何公差の四大分類:正しく指示できていますか?

幾何公差の記号は数が多く、初めて見ると複雑に感じられるかもしれません。
しかし、実務で頻繁に使用される重要なものは、大きく4つの分類に整理できます。

この4分類を理解することで、多くの図面における幾何公差のポイントを把握することができます。

1️⃣ 形状公差(Form Tolerance)

形状公差は、単一の形体そのものの幾何状態を管理する公差で、基準(データム)を必要としません

評価のポイントは、「その形状自体が正しいかどうか」です。

代表的な項目は以下の通りです。

  • 平面度(Flatness):平面が本当に平らであるか

  • 直線度(Straightness):軸芯やエッジが曲がっていないか

  • 真円度(Circularity):断面が真円であり、楕円になっていないか

形状公差は、幾何公差の中でも最も基本的な分類です。

2️⃣ 姿勢公差(Orientation Tolerance)

複数の形体間に位置関係がある場合には、姿勢公差を使用し、基準(データム)を設定して評価します。

姿勢公差では、「形体同士の向きが正しいかどうか」を判断します。

主な項目は以下の通りです。

  • 直角度(Perpendicularity):90度の関係が保たれているか

  • 平行度(Parallelism):一定の方向関係が維持されているか

これらは、組立性や荷重のかかり方に大きく影響します。

3️⃣ 位置公差(Location Tolerance)

位置公差は、GD&Tの中でも非常に重要な要素です。

穴・溝・軸などが、三次元空間の中でどの範囲に存在してよいかを定義します。

特に 位置度(True Position) は、単純な ± 寸法よりも、組立要求を合理的に表現できる手法です。

4️⃣ 振れ公差(Run-out Tolerance)

振れ公差は、主に回転部品に適用されます。

静止状態の形状ではなく、回転したときに偏心や振れが発生しないか」を評価します。

円周振れや全振れがあり、高速・高精度が求められる回転部品では特に重要です。

🛠️ 幾何公差が加工・検査に与える影響

加工および測定の実務において、幾何公差は以下の点に影響を与えます。

  • 加工方法および工程設計

  • 取付け方法および基準設定

  • 加工順序と加工安定性

  • 検査方法および測定難易度

そのため、幾何公差の設定は設計上の問題にとどまらず、生産効率や品質の安定性にも直結します

 

✅ まとめ

幾何公差の目的は、図面を複雑にすることではありません。部品に求められる機能要件を、明確かつ実行可能な形で伝えることです。

幾何公差を正しく理解することで、設計と加工の間に生じやすい認識のズレを減らし、組立成功率や製品信頼性の向上につながります。

今後の記事では、各種幾何公差について、さらに実務的な観点から詳しく解説していく予定です。